空から俯瞰
個人の記録である。
であると同時に、空からながめた大局観もうっすら読み取れる。
スターリングラードの話が前のほうに書かれている。
家々、一つの部屋、工場の壁の一片を巡って戦っている。
だから爆撃には注意の上にも注意を重ねなければ友軍を傷つけてしまう。
航空写真も日々配られていたという。
ある日、ソ連の反攻が始まる。
上空から一団の兵士に出会う。同盟のルーマニア軍だ。
算を乱して潰走してくる。ぞっとする光景だった。
地上に立ち止まって戦う友軍がいないと、爆撃しても、大洋に小石を投じるようなむなしさを感じたという。
日付、地名、所属などがそれほど詳細には書いていなくて、他書との照合がややむずかしい。
新訳が望まれるのだが…
正直に言って、文章的にはまったくいただけない本だ。
英訳本の日本語訳であり、固有名詞の表記などはドイツ語の発音をしらない人物の手になるものだとわかる誤りが散見どころかてんこ盛り。
独→英→日の翻訳の過程で生じているだろう、語訳やニュアンスの変化を窺わせる文章も見られる。
訳者による初版のまえがきの日付は昭和27年となっており、そこから何も変わっていないのだとすれば、ぶっちゃけ出版社の怠慢さえ感じるし、怒りさえ覚える。
だが、それでもこの本は読む価値がある。
ハンス・ウルリッヒ・ルーデルの名を知っている人にはなおさら。
自伝である以上、そこに書いてあることをすべて鵜呑みにはできないにせよ、強固な意志を持ったタフな人間がどれほどのことをやってのけられるのか、その例証がこの本には描かれている。
原文からして、素朴であり、簡にして要を得た文章であろうことは訳文の悪さにも関わらず伝わってくる。
それだけに、ドイツ語と歴史を知り抜いた訳者による新訳が待ち望まれる。
常識や日常は人によって違う
「機会は必ず訪れる。決して自信を失うな。」社会に対して後ろ向きで今でもうつ状態に近いところまで落ち込んでいる自分にとってこの率直な一、二文は、身近にいる人の励ましているのか貶しているか分からない曖昧な言葉よりも数倍胸を打った。 内容は淡々と日常生活を語るように戦場が語られている。ときどき不時着や爆弾がすぐそばに落ちたときのことが笑いの種として書かれていたりするので一つ間違ったらルデルさんが死んでいたかもしれない場面でも、ついつい笑ってしまったりして、別の意味で精読が必要かもしれない。
淡々と…
先の大戦を生き残った人の書いた本は、今から考えると創造もつかないような経験を語っているわけですが、この人はその中にあっても特別ではないでしょうか。出撃回数にしろ撃破した艦船や戦車などの数にしろとてつもない数字です。この辺のところがあまり露骨に表に出てこないのが、多くの死と理不尽とも思える運命(あるいは単に運か…)を見てきた人ならではということなのかもしれません。 英語版の日本語訳ですので致し方ないのかもしれませんが、この手の内容の本にしては翻訳に少々無理があるところが散見されます。少々残念です。
学習研究社
不屈の鉄十字エース―撃墜王エーリッヒ・ハルトマンの半生 (学研M文庫) 北欧空戦史 (学研M文庫) スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫) バルバロッサ作戦〈中〉―独ソ戦史 (学研M文庫) 大西洋の脅威U99―トップエース・クレッチマー艦長の戦い (光人社NF文庫)
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