結局何が変わったのだろうか
当時あれだけ騒がれたこの事件も今では次々と起こる新たな事件の山に埋もれてしまった観もある。いや、考古学に興味のある人々の間ではともかく、世間ではもともと話題にならなかったのかもしれない。
この本はあの旧石器発掘捏造の後日談に当たるとおもってよいだろう。
発掘捏造自体は前著の『発掘捏造』に詳しいようであり、この本はその後の考古学界の検証を中心としたものとなっている。
それにしてもなぜこれだけの長期間捏造が発覚しなかったのだろうか。
そして、疑問を感じていた専門家も少なからずおり、一部はその疑問を活字にまでして提起していたのにほとんど検証もなく、受け入れていた考古学界の実態。
学問とは疑いを持つことがすべての始まりではなかったのではないか。「こうあってほしい」「こうあるはずだ」といった思いこみや、批判への遠慮が出土物や出土状況、各種学説を総合して検証するはずの目を曇らしてしまったのではないだろうか。科学的に検証する手段にかけるといった問題ではない。
そこへ学閥争い、民族的な動機、功名心といった学問そのものとは別の次元の問題も絡み、捏造をのさばらしてしまった。
残念ながらそういった考古学界はほとんど変わっていないというのが読了後の思いである。
「ない」ことを証明するのは「ある」ことを証明するよりはるかに難しいことはわかる。開発のための緊急調査が主体となり、専門家が忙殺されているという現状も理解できる。
捏造が発覚したことにより、発覚前に比べて何が変わったのか。旧石器という存在が否定されただけで、他は何も変わっていないのではないだろうかというのが私の偽らざる感想である。
この本は旧石器遺跡捏造事件を万人に伝える最良の記録である
旧石器遺跡捏造というこの事件は、「科学と人間の関係」を語るものとして歴史に残るだろう。この本はそれを万人に伝える記録として最良のものの一つである。
考古学では過去に外国で捏造事件があったし、考古学以外でも多くあったであろう。重要なことは、学問には個人の力以外に組織としての必要な重要事項があることを認識する点にある。学問の社会的責任を自覚し、組織として他との交流を盛んにするべきである。
考古学の実態を憂える。
読み終わって暗澹たる気持ちになれる。考古学を好きで ずっと色々読んできた。しかし考古学者というのは「三千年前の石器」と「三百万年前」の石器が区別出来ないのだ。カミノテというピエロが来ないと石器が出ない、来れば すぐ出る、こんな話を20年間疑うコトもせず超能力だと済ませていた。勿論マトモな先生方も居た。しかし考古学会で無視され文化庁に無視され 毎日新聞が実態をすっぱ抜くまではマトモな先生が異常者扱いだった。もちろん捏造発覚後 私は皆その責任を負い辞職されたのかと信じていた。捏造の疑いを掛けられただけで自死された先生もおられるのだ。ところがどっこい確信犯的な共犯者が相変わらず その地位に座っている。誰も責任を問われず この事件を風化させてはいけない、と強く感じた。
責任ある丁寧な追跡報告
読者の私は考古学についてまったくの素人であるが、同じくかつては素人であった取材班による親切な説明によって、事の成り行きや問題点を非常によく認識することが出来た。この本を読む前に、できれば前作の「発掘捏造」を読むことをおすすめする。毎日新聞社の取材班、藤村氏周辺の関係者など、登場人物がほぼ重複しており、合せて読むことでより理解が深まると思われる。 2000年11月5日の文字通り歴史的なスクープから、2001年9月29日の第二のスクープ(藤村氏本人による数十にわたる遺跡捏造の告白)までの間に、自治体が科学的な根拠から捏造と最終判断した遺跡が一つもなかったところに、この分野の未熟さと鈍さが伺える。そして、この第二のスクープは、日本考古学協会の特別委員会が行われる予定であったその日に発表されたもので、それまでの取材の経緯や、重要な情報開示の引き延ばしを是としなかった判断について、本書において詳細な報告がなされている。 そして、単なるスクープにとどまらず、スクープ後の遺跡検証について、丁寧な追跡取材がなされている。偽りの「世紀の発見」に長年踊らされてしまったマスコミとしての立場も含め、本書によって毎日新聞は一定の社会的責任を果たしたのではないかと評価している。 私の手元には、平成元年(1989年)発行の高校日本史教科書(実教出版)があるが、そこには「また近年、岩宿遺跡よりもさらに古く、10万年以上前にさかのぼると考えられる石器が宮城県馬場壇遺跡など、いくつかの遺跡で発見された。」と脚注に記されている。もちろんこれもウソの記述である。高校生当時の歴史の知識を私のように皆が忘れていれば良いのだが・・・影響の大きさ、広さに、ただただ愕然とするばかりである。
毎日新聞社
発掘捏造 旧石器遺跡捏造 (文春新書) 新聞社―破綻したビジネスモデル (新潮新書) 日本人のはまる健康の落とし穴 「メタボ」「血液ドロドロ」「コレステロール」「アンチエイジング」…みんな怪しい! (別冊宝島 1506 ノンフィクション) 日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)
|